──うつわを通じて厚木のまちを見つめた40年余──

　小田急線本厚木駅から少し離れた一角に、落ち着いた佇まいを見せている陶磁器のお店、花甕がある。代表の辻文子さんが一人で切り盛りする有田焼・備前焼・唐津焼の専門店で、美しい陶磁器が上品な雰囲気を匂わせている。
　「うつわは生活に彩りを与えてくれるもので、食べ物の衣装でもあるんです」と辻さん。花甕は今年で42年目を迎え、高度成長期の頃から厚木のまちにあって、人々の生活に寄り添い、彩りを与えてきた。
　安価で多くの食器が必要だった時代を経て、現在は個人が個性を大事にする時代に変わっていると感じた辻さんは、お客に合わせ柔軟に店のスタイルを変えてきた。
　「今は、有名無名を問わず、作家の作品─それも作った方の意志が伝わるようなうつわを中心に揃えています」だからお客には、一年に一度でも構わないので、気に入ったうつわを購入してもらいたい。「そうして集めたうつわが、自分だけのギャラリーになったらとても素敵じゃないですか」と結び、辻さんは微笑む。
　作り手と使い手を結び、彩りを添える存在として、花甕はこれからも厚木のまちに咲き続ける。

「かながわ商店街・おみせ新聞平成30年10月号より」